戻る 前へ ※より不快な表現があります。 8.あなただけの怪獣 後輩は手を開き、中の先輩にささやきかけた。 「先輩、私の体を使って勝手に気持ちよくなってましたよね」 後輩は椅子にすわってスカートをまくりあげ、糸で吊り下げた先輩の体を純白のショーツの上に降ろした。 「私のことも気持ちよくしてくれるとうれしいなあ」 ゆっくりと降ろされたため、先輩は自分がどこに立っているかは知っていた。 だが、目の前に広がる雪原のような白い丘陵、坂の上にそびえる何重にもなった紺色のカーテンとそれを押さえる肌色の大樹、雪原の切れ目から延びる肌色の大筒、この光景がとてもただひとりの少女の下半身のものだとはとても思えない。 先輩は後輩の顔を仰ぎ見ようとしたが、背を反ってどれだけ角度をつけて見上げてもその顔を見ることはできなかった。後輩の顔は、あまりにも高い位置にありすぎた。 「……どうやって」 <自分で考えてくださいよ、それくらい> 浴槽の時とは違って後輩がそばにいるのは確かなのに、どこから声が届いているのかすらもうわからない。スカートの幕が喋っているようにも見える。広大な生足から声が響いているようにも聞こえる。 先輩は、ただ膝をつくしかできなかった。大自然や建造物に対して何かしようと考えたことがないように、途方もなさすぎる巨大な少女にはどうする気も起きなかった。 <先輩、何もしてませんね> 背筋がびくりとこわばった。 <こんな大きさで何かしてようがしまいが、私にはわからないって思ってる> すべて図星だった。踏みつぶされかけたり、口へ放り込まれたりといった時のものとは全く別種の恐怖が、先輩の心臓を鷲掴みにする。 <小さな先輩がおっきな私に対して、何か隠し事できるとでも思っていたんですか? 怒っちゃいますよ?> 先輩は、ショーツの平野に身を投げ出して、全身をなすりつけはじめた。そうしなければならなかった。 摩擦で肩や腕が真っ赤になりはじめたころ、じゅく、という水音と共にショーツが濡れて、その下の陰毛の草原が透けて見え始めた。 (感じ……てるの?) 猥らな蜜の湿り気を足もとに感じる。タワーのように大きい後輩に性的な満足を与えられているというのは、山頂を征服したアルピニストのような達成感がある。 急に視界が歪曲しはじめた。また縮むのかと思って悲鳴を上げたが、それは違った。気がつけば、丘のようだったショーツの平原はテニスコートぐらいの広さになっていた。 「元の大きさに戻ってる! 戻ってるよ、やった!」 実際は五.四センチではなく三センチほどの大きさになっていたのだが、先輩はその違いを判別できなかった。もっとも、本当の大きさは三センチでも五.四センチでもなかったはずなのだが。 先輩は飛び上がって驚喜していると、再び後輩の声が響いた。 <先輩が今の大きさに縮んだときって、どういう状況でした?> 先輩は、声が聞こえているのか疑問に思いつつも、謎の人物がドアを叩き出して恐怖を感じて心細くなったとき、小さくなったと正直に答えた。 <へえ。つまり、私がいなくなったのが先輩の小さくなっちゃった原因なんですね> 「そうかもしれない……」 何をむちゃくちゃなことを言っているんだ、とは思ったが確かに心当たりがないわけではない。 <心細さが原因なんですよ。心が細くなると、体も小さくなるんです> 自信満々な声で言われると、そんな気もしてくる。いや、実際そうなのだろう。 <先輩が大きくなれたのは、どんなときでしたか?> 「後輩を……感じさせた、時」 <それは少し違いますね> 表情こそ見えなかったが、声の調子から後輩の機嫌がよくなっていることを悟れた。 <先輩は私に奉仕しているとき。私の存在で胸が満たされているとき……心も満たされるんですよ> 後輩のその言葉は、天啓のように心に染み渡った。 「そうか! 私は、後輩のことで心がいっぱいになったとき、大きくなれるんだ!」 思いも寄らない解答の発見から、先輩は無邪気に喜びの声を上げる。のちに先輩は、このときの自分の狂いっぷりを思い出すたびにバスケットの壁に頭をぶつけるようになる。 そうとわかれば、もう躊躇はない。 濡れた地面に再び体を密着させ、全身で下着越しに恥部を愛撫しはじめた。立ち上る後輩の恥臭に先輩も興奮し、その動きは速くなる。 「あ、あっ!」 後輩は明らかに感じていた。びくん、と全身をふるえさせる。後輩の盛り上がりの上で腰を振っていた先輩はひとたまりもなくはねとばされ、椅子の上へ、太股の狭間へと転落する。 先輩の周囲を、三メートルもの高さになる脚が囲んでいた。正面には、白いショーツの壁があった。愛液にしめったそれが後輩のクレヴァスをくっきりと見せているのを、少し離れた位置に立った先輩ははっきりと目にすることができた。 (あそこに……行かなきゃ) 元の大きさに戻りたいという欲求以外の何かが、先輩をつき動かしていた。ショーツの壁面を上ろうとするが、こんもりと盛り上がった陰唇がオーバーハングとなってそれを阻んだ。求めているものが障害となるとは皮肉なものだった。どれだけ焦っても、恥丘は先輩を拒む。せめて股間に張り付いて舌を這わせようとしたところで、めまいが起こる。後輩の女陰が、どんどん遠くなっていく。また縮んでいるのだ! 時間切れ、ということなのかもしれない。大きな塀程度だった脚とショーツは、今や堤防のように巨大になっていた。両側の太ももから、じっとりと熱が放射されていて、蒸し暑い空間を作っていた。 二センチ足らずの目線からは、下着に閉ざされた後輩のもう一つの穴に気づけた。 (……あっちにこだわる必要はなかったかあ) 小さくなったことで、後輩の陰部から漂う淫靡な匂いがつんときつくなる。先輩は、ふらふらと誘われるように白い下着の凹凸が作る、絶壁の真下の洞窟へと歩いていった。 <先輩……そんなところに来ないでくださいよ。押しつぶしちゃいます> 後輩は、自分の肛門よりも小さい先輩を指貫ですくいあげ、手のひらに乗せて目の前に持ってきた。 「ねえ、もっとさせてよ後輩……」 だって、そうしないと戻れない。後輩の、マンションのように大きい顔を上目遣いに見つめる。 「だめ。休憩にしましょう」 後輩の口元が弧を描く。 「でも、がんばったからご褒美をあげますよ」 先輩の乗る手のひらを横に向けて、その側面に顎をくっつけて口を開いた。 唇の厚みにすら負ける先輩が反射的に身をすくめる。 「た、たべないで」 はぁ――。 後輩は、優しく、小さな先輩が吹き飛ばされない程度に慎重に、息を吐きかけた。先輩は、濃厚な唾液の匂いにむせこむ。 「くさいよお」 「でも、好きでしょ、私のおくちの匂い」 「う、ううん」 嘘であり本当であった。本当は、口臭が好きというより、後輩の匂いそのものが好きだった。自分にいつからか染み着いている匂いと同じものだから、安心できるのだ。湿っていて、暖かく、優しい感じがするそれに、ずっと包まれていたい。 「じゃあ、もういりませんよね」 後輩が口を閉じていくのを見て、先輩は先ほどの答えを悔やみ、焦る。 「待って!」 閉ざされゆく口へ向かって、先輩は手のひらの上を全力疾走した。後輩は、先輩が一センチ(一メートル)走るよりも早く唇を合わせることができたが、あえてそれをしなかった。 先輩が口へと飛びついたのは口が閉じきったその直後だった。ぴったりと合わされた唇に顔面から飛び込むことになり、先輩は下唇の弾力に跳ね返された。 「キスがしたかったんですか?」 手のひらから口元をはなして後輩は笑った。 「ちがうもん……」 そう言うのが精一杯だった。 「しょうがないなあ」 後輩は手のひらを自分の顎の下へと移動させた。この角度とこの近さでは、先輩から後輩の表情がうかがえなくなる。後輩は唇をもごもごと動かす。 「先輩、私の中指の関節ぐらいまで避難してください」 なんのことかわからないままに、先輩は指の隙間に足を取られないように中指の第一関節まで移動すると、桟橋が上がるように指が内側へと曲がって先輩の頭上を覆い、手相の溝が深くなる。 そして、空から粘性の液体が降り、手のひらの陥没に一筋の滝のように注がれた。大小の泡に濁った水たまりに、後輩の唇が糸を引いている。先輩の立つ前に、唾液の池ができていた。後輩が口を閉じたまま、唇の間から舌をだらんと出していた。 その唇からはみ出た舌をぼうっと眺めた後、むせかえるような唾の匂いの中、先輩は指の付け根の斜面を降り、池の岸部へと近づいた。 「飲んで、いいですよ」 先輩は、ごくりと喉を鳴らす。立ちこめる唾臭が先輩の感覚の全てを焼いていた。おそるおそるしゃがみこみ、首を水面に近づけ、舌を這わせ、人肌の温さのそれを口に含む。 「……!」 それは、今まで味わったことのないものだった。ただの湯のものではもちろんない。シロップのように甘ったるくもなかった。ただ、満足があった。後輩のものを自分の中に取り込んでいることが、先輩を火照らせていた。 はじめはちろちろと舐めるように口にしていたのを、しだいに顔をつけて貪るようになった。百倍単位の唾液は粘性が強く、一気に口に含むことすら難しい。含んだら含んだで重たい粘液の塊がどろりと喉にからみつき、窒息しそうになる。それだけに、飲み込んだ時の喉ごしは格別だった。自分の胃に後輩の唾液が満たされていく。 しまいには、唾液溜まりに飛び込んで全身で唾液を味わっていた。後輩の匂いを全身になすりつけたかった。そうすることで、自分は、後輩の―― * バスケットの底に、ベルトだけをつけて全裸の先輩が仰向けに値転がっていた。あいかわらず、一センチという指先サイズだった。口はぽっかりと開き、目はうつろに遠すぎる天井を見つめていた。視界の端には後輩の栗色の髪が見える。こうして休息を許されているときも、後輩の監視の目(彼女いわく「心配だから見守っている」らしい)は光っていた。どんな顔で下界を見下ろしているのか、先輩にはうかがい知ることはできない。 (ワーデン、ワーデン、ワーデン) <呼んだ?> 言われたとおりに名前を三度呼ぶと、一秒も待たずに彼の返事が返ってきた。 「……確認させてほしい」 からからに乾いた口の中を、必死に唾を出して潤し、張り付いた舌を動かして言葉を作る。後輩を警戒して、自分にしか聞こえないほどの小声でささやいている。 「ハンドトゥハンドとやらを使って、私を小さくしたのは……後輩だな」 <そうだ> 返事は速やかで、遠慮容赦のないものだった。 「……ああ」 後輩が自分を縮めた。 後輩が自分を縮めた。 後輩が自分を縮めた。 重い真実が、胸の中へと沈んでいく。 「どう、して……」 虚空に問いかけたが、答えは返ってこなかった。全能のワーデンでも、ひとりの少女の心の中を知ることはできない。 姿の見えない存在と会話する自分を、先輩は滑稽に思った。あのミニチュアの街は本当に自分が見た夢の風景にすぎず、こうして会話しているワーデンも、度重なる後輩の精神的陵辱の圧迫から逃れるために自分が生み出した妄想的な存在なのではないか。 まあ、それを言ってしまえば、この状況もよくできた悪夢のようなものだ。だが、はるか上空から突き刺さる後輩の視線と、寝床に漂う後輩の匂いが、それを否定していた。こんな――認めたくないが――魅惑的な匂いが夢だとはとうてい思えなかった。夢なら醒めてほしいなんてフィクションみたいな願いを抱くとは思いもよらなかった。 <本当に醒めてほしい?> ワーデンが意味のはかりかねることを言った。 「どういうことだ」 <……先輩くんは、ぼくが慈善事業で『ゴーストタウン』を管理していると思っているかい> 「何が言いたい」 <一週間に一度、百分の一の大きさの人間と戯れている。性的に、あるいは暴力的に、ね> 言葉を失った。 <小人を口の中に放り込んでやる。舌で歯茎や歯列に押し当ててやって、そこでもがく感覚を楽しむ。舌の裏の唾液溜まりに突っ込んでおぼれさせる。潰さないように加減するのが大変なんだ。自分の力では舌にかなわないし、唾液で溺れてしまうような蟻以下の存在ということをさんざん実感させてあげてから、舌の先に乗せて口の外へと突きだしてやる。すると、外に出られたと哀れな小人は喜ぶ。そうしたら、間髪入れずに舌を巻きとって飲み込んでやるのさ。ごくん、って> ワーデンは常軌を逸したその状況を淡々と説明する。 <飲み込まれたあとはどうなるか? いくら小さいからって食道はそれを見逃さない。柔肉がじっくりとゆっくりと、人の体をもみしだきながら胃へと運んでいく。この時点で骨を折る場合もあるね。体内は空気が少ないからたいてい胃にたどり着くころには意識を失ってるから、そのまま胃液に溶かされてぼくの血肉になる。ごくたまに意識を残してる人もいて、そういう人は胃壁を叩いて暴れる。吐き出してくれるかも、なんて淡い期待を抱いてるのかもしれないね。その生への終着には感心する。でも一寸法師よりも小さい体に何かされても、なにも感じられないんだよね。だから、そいつは十センチぐらいに拡大してやる。そうすると、うまいぐあいに暴れているのを感じることができるんだ。自分の中で無駄な抵抗をされているのが面白くてこそばゆくて、それをおかずにぼくは射精をする。まあ、最終的には力つきて、薄れた意識のなかゆっくりと胃液に溶かされていくんだ、安らかな最期だと思うよ> 「狂ってる」 <ぼくの性器を相手に百人がプロレスをした話もしようか?> 「つまり、おまえは自分の倒錯した快楽のために死にゆくはずの人間を保護――飼育していると?」 <生きる為さ> 「……生きる?」 <比喩でも何でもなくね。形而上と形而下のはざまにいるぼくたち『プレイヤー』は常に他人の情動を摂取しないと体が小さくなり、やがては消滅する。『グッズ』は使用されるたびに使用者の情動を食らい、制作したプレイヤーへそれを届ける。ゆえに、ぼくらは力を望む人間にグッズを貸し与える> 「悪魔だな」 <悪魔(ディアブロ)か、そう呼ばれた日もあったね> ワーデンの声は何の感情の動きもない。 <重要なのはこれからだ。先にぼくがあげた例で、摂取できた感情はなんだと思う?> 「『恐怖』とか『怒り』じゃないのか。あとは『絶望』とか、『屈辱』とか」 本来ならば自分より小さなはずの子供に飲み込まれ、消化される人間がそう思わないはずがない。 <もちろんそれが大半だ。しかし、それだけじゃない。ーー少数だが、それとはまったく別ベクトルの情動があった。『安心』『幸福』『恍惚』だ> 「冗談だろう? どこの世界にそんな」 <きみはそれを否定できるのかい?> 後輩の衣類でオナニーをした。 後輩のショーツを自ら愛した。 後輩の息を嗅いだだけで濡れた。 後輩の…… 後輩の口に飛び込みたいとすら思った。 「違う! あれは、後輩にあんなことをされておかしくなっているだけで……」 <それもきみ自身だ> 「う……嘘だ、私はおかしくない、私は正常なんだ」 <ぼくは、プレイヤー協定でグッズの使用に関して干渉することはできない。きみをここから連れ出すことは可能だが、ハンドトゥハンドに対してはそれも無意味だ。別に、ぼくは君のことを責めたいわけじゃない。ただ、それを受け入れるという選択肢もあるということを伝えたかったんだ> それきり、ワーデンの声は途絶えた。言うべきことはすべて言った、ということだろう。 先輩は考え込んだ。受け入れなければならない。後輩は、自分を縮めた上でバスケットの中に軟禁し、暴力と性的誘惑を繰り返すことで彼女の思うままの玩具という存在に自分をおとしめようとしている。そして自分はそれに対抗する手段はない。 物理的にはもちろんのこと、精神的にもそうだ。あのとろりとした甘い香りの息を吐きかけられるだけで、目の前の巨人が母のように恋しくなり、すべての肉体と心をゆだねてしまってもいい、そんな気持ちにさせられてしまう。理性が戻ったとき、浅ましい自分自身に激しく嫌悪し、次はそうならないと肝に銘ずる。 この寝床もすでに安全な場所とは言えなくなっていた。バスケットの底に沈殿した後輩臭は二センチ足らずの人間にとって致命的なまでに濃密なものと化している。 「!」 先輩は、無意識のうちに自分が股間に手をあてがい、人差し指でさすっていることに気づいた。あわてて底から逃げ出すがどこを見てもシルク、シルク、シルク、後輩の腹の中だった。 ここは甘やかな地獄なのだろうか。それとも苦悩の天国なのだろうか。後輩はなんだ? 悪魔か? 天使か? ……神、か? * しばらくすると、後輩が立ち上がり、先輩のいるバスケットは薄暗くなる。後輩の影に包まれたのだ。 「ねぇねえ、先輩、おトイレ行きたくありません」 (来た!) 「いやだ!」 先輩は、ベルトの留め金を外して投げ捨て、シルクの敷物にしがみついてそれを拒否した。本当はさっき後輩の――をガブガブ飲んだから尿意はあった。が、この傲慢な支配者と一緒にトイレに行けば何をされるかわからない(本当のところは、だいたい想像はついていたが)。 「ちいさな先輩はかわいいから、一人にしておくと泥棒さんに誘拐されちゃうんですよ?」 「トイレなら後輩、お前ひとりで行けばいいじゃないか。それとも、一人でトイレに行けないほど子供だったっけか?」 精一杯の虚勢だ。この抵抗が意味のあるものとは自分でも思えない。後輩は、自分の住まうこの寝床をまるごとおまるとして使うことができるくらいには巨大で強大なのだ。それでも、ポーズとしてでも拒まなければいけないと思っていた。せめて後輩の匂いでおかしくされていないときぐらい、人間としての矜持と理性を保つと心に決めていたのだ。 「ふうん」 突如、先輩のすぐ背後に巨大な何かが振ってきて大地が振動する。立ち上がって振り向くと、肌色の巨大な柱がそそり立っていた。桃色の床に接している部分には、先輩の身長ほどの高さの不透明なタイルが貼られている。これは爪で、柱は後輩の人差し指なのだ。 柱が、敷物をへこませながらじりじりと先輩へと接近してくる。 (つぶされる!) 反対方向へ駆け出すと、そっちにも指の柱が立っていた。さらにその反対には、布団の山しかなかった。五.四センチの時には掛け布団としてちょうどよかったシルクは一.五センチの今はテントのように鎮座している。 逃げ場所はここしかない。布の覆いの中に飛び込む。指が迫ってくる様子はもうなく、先輩は一息つくがその直後、急激なGに襲われる。テントの隙間から、景色が急速に動いていくのが見えた。布団にくるまれたまま、後輩の指によって持ち上げられたのだ。 布団に押し付けられる感覚が終わると、次にやってきたのは浮遊感だった。眼下には硬いフローリングの木目が見える。何かの拍子で転がり落ちないように必死にしがみついていると、浮遊感は止んだ。床に下ろされたらしい。 「ねえ先輩。お話しましょう」 とんでもない高さから声が振ってきた。首を痛くするぐらい見上げても、後輩の突き出た乳房に盛り上がったブレザーの胸の部分しか見えない。昔行った東京タワーを思い出す。まともな比較物がないので確信はなかったがあれより大きいだろう。 「先輩が、お風呂からあがって、新しい下着をはくとしましょう。その中に、何か生き物が入っていました。それは何でしょう」 意図のわからない質問だったが、先輩は慄きながらも叫び返してそれに答える。 「なんだそりゃ……虫か何かだろう?」 「そうですね、虫ですね」 後輩が、何の前触れもなく片足立ちになった。五階建てマンションのように大きな足の裏の指紋が、くっきりと見てとれた。両足の間から見える白いショーツは空に浮かぶ雲のようだった。 「では、その虫をどうします?」 踏みつぶされるのか、と思ったがそうではなかった。後輩はその体制のまましばらく止まり、ショーツを脱ぎ、投げ捨てた。巨大な布の塊が、先輩からほんの十メートルほど前に落下した。あの情事から履きかえられていなかった下着は、鼻に刺さる媚臭を放っていた。 後輩はゆっくりとしゃがみこみ、先輩をにやにやと見下ろしていた。膝だけで高層ビルのような高さだった。脚と脚の間にはもはや隠すものもなく、十メートル以上にもなる卑猥な亀裂が広がっているのが見える。自分の上に影を落とす後輩はつま先を支点に尻を浮かせて前後にゆらゆらと揺れているので、今にもこっちに倒れてきそうで怖い。 「そりゃ……つまんでゴミ箱にでも捨てるさ」 何を考えているのか読めない野生動物に相対しているときと同じ心境になり、刺激しないように後輩を向きながらそろりそろりとフローリングの上を後ろ向きに歩く。 どすん! 突如、後輩がつま先でしゃがんだ体勢を崩し、プリーツスカートに包まれた尻を床に落とした。その衝撃で床と空気が激しく震動し、たまらず先輩は仰向けに転んだ。振動の余韻で立ち上がれない先輩は、座り込んだまま後輩をただ呆然と見ている。 後輩は両脚を伸ばし、先輩のいる位置を取り込むように胡坐をかく。長城のようにどこまでも、後輩の脚が横たわっていた。 「では、先輩は虫ですね」 後輩は脚の指先で、先ほどまで先輩が入っていた布団を器用につまみあげた、同時に、手のほうで先ほど自分が脱ぎ捨てたショーツを拾い上げ、その両方を拡げて先輩の眼前にかざす。 「う、そ」 それらを見比べた先輩は口を両手で覆うことしかできなかった。 両者にあしらわれたレースの模様は、完全に一致こそしなかったものの、意匠がとてもよく似ていた。賢明な先輩はそれですべてを理解する。 「先輩、布団にもぐって『いい匂い』だなんて言いましたよね」 「あ、あああ」 「それ、私のおしっこの匂いです。生理の匂いです。……私の恥ずかしい匂い、あなたはそれをありがたがっていた。あなたは、私のショーツでぬくぬくと幸せそうに寝ていたんです。わかってますか?」 先輩は、目を覆っていた。 「あなたは女の子のパンティに棲む虫。虫。虫。虫、虫、虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! あははは」 罵声は物理的な破壊力を伴っていた。哀れな虫は頭を抱え、身をすくめてその場にうずくまった。狂った目の前の巨人が怖い。浴びせかけられる大声も怖い。 なにより、虫呼ばわりされて、自分が後輩の指先にも満たない、息を吹けば飛ばされてしまうちっぽけな自分という立場を確認し、安心してしまう自分が怖かった。虫と一度呼ばれるたびに、自尊心が奴隷としてのものに置き換わっていくようだった。 「虫呼ばわり……しないで」 ぴたり、と虫コールは止んだ。驚くべきことに、後輩は先輩のかすかな声を判別していた。 「私は人間だ! 五センチだろうが一センチだろうがそれは変わらない! お前の先輩だ! なんで、こんなことをする! 私をだまし、陥れる! 答えろっ!!」 先輩は、叫びながら泣いていた。 これが、理性と快楽の挟間に苦しんでいた先輩が最後に出来た人間宣言だった。 「先輩が悪いんですよ」 後輩は困ったように笑った。 「後輩が、あまりにも食べられる立場のようなふるまいをしたから。ただの小柄な女の子でしかない私を怪獣みたいに扱うから。私は怪獣としてふるまうしかなくなったんです。あなただけの、怪獣に。でも、本当はあなたがちっぽけなだけなんです。女の子の下着に入り込んだり、人のよだれを飲んで喜んだりする人間がいますか? あなたはね、虫なんですよ。虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫! 虫ぃ!」 ふたたび先輩は頭を抱える。 「やめて……」 後輩は四つん這いになって顔を先輩へと近づき、急に調子の変わった猫なで声でささやいた。 「なーんて、ね。くーちゃんは人間ですからね。私は虫扱いしません」 くーちゃんは下の名前からつけられた、先輩の昔のあだ名だった。そのかわいらしいいあだ名も自分の名前も嫌いだったので、先輩は後輩に対して自分の名字か単に『先輩』と呼ばせるようにしていた。 「くーちゃんはイヤですか? 『くるみ』『くるみちゃん』『くー』とかいろいろバリエーションはありますけど」 「こ、後輩……」 「おっと、でもその呼び方はなしで。私はあなたの後輩じゃないし、あなたも私の先輩なんかじゃありません。私の先輩は、もっとかっこよくて、背中で私を守ってくれる、女の子とは思えないほど強い人です。手のひらの上で年下の後輩におびえる先輩が、どこにいるんですか?」 「……」 乱暴な言い分だがそれを認めざるを得ない。結局、最後まで後輩――すばるには年長者としての、人間としての尊厳を見せることができなかった。 「そんなに落ち込まないでくださいよ。これも人生です。私のことは、敬意を込めて『すばる様』って呼んでくださいね。『ご主人様』でもオッケーですよ」 「……」 先輩――くるみは、うつむいたまま何も言おうとしない。 「これからずっと世話してあげるっていうのに、反抗的だなあ。最初の態度が肝心なんですよ? こういうのは」 すばるは聞き分けのない子供を叱るように口を尖らせた。 「ま、いいか。すっかり忘れてましたけど、行きましょトイレに」 すばるは、床に置いた脱ぎたてのショーツを指さし、乗れというジェスチャーを出した。くるみはそれに従い、広大なマットレスのようなすばるの下着に乗る。すばるはショーツごとくるみを両手で包み込み、ノーパンのまま立ち上がり歩きだした。こういった運びかたをしないと、力を入れすぎて先輩を潰してしまうのだ。 * 「さ、しーしーしましょうね」 くるみは、巨大な洋式便座の縁に座らされていた。素肌の上に、例のベルトを巻かされている。安全を考慮されたらしいが、もう何をさせられるかそれで半分わかってしまった。 「早く出してくださいよ」 何か巨大なものが上空を通過するのを空気の流れで感じた。後ろに立つすばるの顔が逆さまになって自分を見つめている。腰を曲げてこちらをのぞき込んでいるのだろう。 「ほらほら」 指で背中を押される。見つめられていては出るものも出ないが、出すしかなかった。 「んっ……」 しゃああ。 腹部に力を入れると、色の薄いおしっこが放出された。あまりにもささやかすぎる量のそれは眼下の湖へと流れては行かず、その場に留まってしまう。 「おー、出た出た。じゃあ私もしようっと」 また、巨大なものが上を通過していく。見上げると、二本の巨大な柱の付け根にある、くるみを簡単に飲み込めそうなほどの割れ目が視認できた。 どすん! すばるが便器に腰を下ろし、その衝撃で例によってくるみは宙に投げ出され、便器の中へと落ちた。湖まで落ちることはなく、白い陶器の坂に張り付く。それより、すばるはなんて言った? ここで、する? 「くーちゃん、早く出て。私のおしっこがかかっちゃいますよ」 すばるの声はずいぶんと楽しそうだ。 「ま、待ってえ」 「待てません。私、もう出そうなので五秒だけなら待てますけど」 うきうきした調子の死刑宣告だった。後ろを見上げても、急勾配の白い坂だ。登れるはずがない。くるみはそれでも這いあがろうとして、四つん這いに便器にへばりつく。そうしないと、この女主人は満足しないだろうと言うことを、くるみは悟っていた。 「五、四、三、二、一、はい時間切れ」 くるみは一センチと移動できていなかった。すばるは腹部に力を入れる。 放水が始まった。くるみを入れられそうなほどの尿道口から放出された黄金の水はくるみの頭上三メートルほどの白い壁面を叩く。直撃すれば一センチのこびとをばらばらにしてしまう水圧を持つ小水の余波に、くるみはころころとスロープを転がっていく。サッカーボールほどの大きさのしぶきが何滴もかかった。きつい刺激臭にくるみは涙を流す。 やがて便器の底の湖へと水没する。すでに水の色は黄色く濁っていた。水で薄まったとはいえ、強烈な尿臭にくるみの視界まで黄色く霞む。くるみを追いかけるように鉄砲水が坂から水面へとスライドしてきて、直撃は免れたもののそれの作り出す激しい水流にくるみは巻き込まれ、木の葉のように浮き沈みを繰り返す。 「あははは、流れるプールだよ」 尿に荒れ狂う温かい海を泳ぎ、やっとのことで水面から顔を出すと今度は直径が自分の体ほどもある熱い水流をまともに浴び、便器の底へと沈んでいく。これを繰り返しているうちに、だんだん便器が狭くなっているのを感じていた。 ざばぁ。ベルトの綱を引っ張られて、水面から二メートルのところに吊される。五.四センチに戻っていた。 後輩の匂いで胸が満たされたからだろう。 「私のもの、好きなんでしょ? いっぱい飲ませてあげるね」 顔面におしっこの滝が直撃した。息ができない。逃げることもできないくるみは、すばるのそれを飲むしかなかった。胃が満たされ、腹が膨れる。 苦しい。しょっぱい。 ――でも、気持ちいい。おいしい。 このまま飲み続けていれば、自分の血液も、胃液も、涙もすべてすばるの聖水と同じものになるだろう。それはきっと素敵なことだった。本当の意味で、心も体もすばるのものになれるのだ。 しかし、滝はだんだんとその勢いを弱め、そして止まる。戸惑っていると、くるみの体は持ち上げられすばるの手のひらへと収められた。 「ふう、いっぱい出した」 排出と辱めの余韻に浸り、恍惚とした表情を浮かべるすばるだが、くるみは満足などしていなかった。 「もっと……」 すばるの手のひらに女の子座りをして、上目遣いに訴える。 「え?」 「もっと……おしっこ」 「あれ? まだしたりなかったんですか?」 すばるはニコニコと笑っている。わかっているくせに、自分に言わせようとしている。本当にいじわるなご主人様だ。 「くるみに……もっと、おしっこをかけてよ、すばる」 「『様』は?」 もう待ちきれないと言いたげにくるみは体をよじった。まるでこっちのほうがおしっこをしたがっているようにも見える。 「くるみに、その……もっとおしっこをかけて飲ませてください、すばる様ぁ!」 くるみは手のひらの陥没に身を投げ出して懇願した。すばる様。初めて呼んでみたが、なんて幸せに満ちた呼び方だろう。 「すばる様、すばる様ぁ」 そう呼ぶたびに、ご主人様への帰依が深まっていくように感じられた。 「くーちゃんは、私のモノならなんでもいいんですね。変態さんだね」 願いが通じて、くるみは便器の中に戻された。便器が、すばるの臀部にふたをされる。天井から時たま垂れる黄金色の滴をけして無駄にしないよう、餌を待つひな鳥のように大きく口を開いて受け止める。何とも言えない甘美な味が口に広がるたび、くるみの表情はほころぶ。 「ああ……」 くるみの体が浮かぶ水面からは湯気とともに薄まった尿の芳香が立ち上り、便器の中にこもっている。これだけでくるみは酩酊状態だった。 間違いなくこの瞬間幸せだった。文字通りの『便所虫』になって、すばる様のトイレに住まうのも悪くないかもしれないとすら思った。水分ならいくらでも毎日新鮮なものが供給されるだろう。そして、食料も。 <くるみには悪いけど、出ないものは出ないよ。だから、別のモノをあげる。……食べちゃだめだよ、おなか壊すから> 「はい!」 天からの声に表情を輝かせる。無論、その言いつけを守る気はなかった。すばる様のモノで、自分を満たさなければならないから。 <んっ……> みちみちと、天井の穴が開き、それが顔を出す。 やがて、茶色の泥に似たそれが降り注ぎ、直下で待ち受けるくるみを押しつぶした。 くるみは、絶頂のまま気絶した。精神はともかく、肉体がそれの発する激臭に耐えきれなかった。 すばる様の高笑いが聞こえたような気がした。 * すばる――後輩は、ブレザーの上着を脱いでベッドにごろりと値転がった。先輩は、意識を失ったまま食事で使う白い取り皿に乗せられ、枕元に置かれていた。靴下は脱ぎ捨てられ、裸足だった。ショーツは新しいモノを穿きなおしている。 先輩のサイズは一.五センチだ。これが当面の標準サイズになるだろう。気分次第で五.四センチに戻してあげるつもりだ。一ミリにまで縮めて、爪の先や尿道や肛門に閉じこめて掃除婦のようなまねをさせるのも面白いかもしれない。先輩は喜んで、虫を通り越して塵同然の扱いを受け入れ、全身を使って細かいところまで丹念にきれいにしてくれるだろう。 意志の疎通が不可能なレベルになるのはともかく、触感では先輩の存在を感じることがまず不可能になるのと、先輩の反応を観察しにくくなるのと、彼女のそばで軽く呼吸しただけで口や鼻の中に吸い込んでしまいそうなのが懸念事項だが。 先輩の自我の破壊は当初の予想より遙かに早いペースで順調に進んでいた。そろそろ最終段階に入れるだろう。たった三日であこがれだった存在が自分の足下にひざまづき、汚物を浴びせられて喜ぶ卑小な存在になりさがるのだ(それも、恐怖や暴力による支配ではなく、自分の意志で!)。これほど痛快なことがあるだろうか? 面白いのは、百分の一の先輩の声が問題なく聞き取れているという事実だった。縮小したてのころは三十分の一の声ですら判別が難しかったのに、いつのまにか問題なくなっていた。 (ハンドトゥハンド、これの効用か) 右手首に光る、目盛りが一.五を指し示している腕時計もどきを眺めた。あの自称女神が解説してくれた。『長期使用特典』らしい。何度もハンドトゥハンドを使っているうちに、『手に入れたモノ』に対する『理解』が深まることによるものらしい。 『グッズ』に情動が食われ、『グッズ』と精神が同化していることの顕れでしかなかったのだが、後輩はまだそれを知らない。 最初から先輩をさらに小さくする案はあった。このタイミングで縮めたのは、先輩に対する『理解』が進んだことと、先輩の態度の変化に伴いサイズをそれに併せて変え、ペット化を促進させること、『自分の存在に心が満たされなくなったとき縮小する』という偽のルールを植え付けるのに最適のタイミングだった、というのが理由だった。 最近は、曖昧にだが先輩の考えていることもわかりかけてきた。そのうち、先輩がどんな表情で自分を見ているのか、先輩の顔を見ずしてわかるようになるだろう。自分の何気ない所作が蟻の視点ではどのように映るかも把握できるようになるだろう。 三度目の縮小、先輩の心のサイズという条件は満たしていたので後はそれをクリアできればミリ以下の世界に案内してやってもいいだろう。 将来、先輩の思考を完全にトレースすることができるようになり、自分の行動を完全こびと用ににシミュレートできるようになったならば、ハンドトゥハンドの指数式の目盛りを限りなくゼロに近づけ、顕微鏡でしか確認できないようなサイズにして飼うという遠大な計画、あるいは壮大な妄想もあった。 今までのようにペットとして小屋を与えるのではない。『自分の身体に』棲ませるのだ。広大な皮膚の大陸と産毛の森を旅する冒険者に、鼻腔の大洞穴やヘアの樹海、口腔の深海をさまよう探索者に、汗で喉を潤し垢で腹をふくれさせる生存者にさせてあげるのだ。生理現象という名の人体の神秘や、天変地異にしか見えない自分の所作をリアルタイムでレポートさせる。これほどのロマンがどこにあるのだろうか。少女の肉体が、先輩にとっては未踏の大秘境になるのだ! 自分の構想が面白すぎて、笑い声をあげてしまう。ひとしきり笑った後、未だ目覚めない小皿の上の先輩を見やる。 自分は、先輩のサイズを手のひら以下ならいくらでも自由に操作できる。だが、それ以上にはできない。そうすれば、二度と戻せなくなる。戻らなくなる。 もう、先輩にはたかれたり、デコピンされたり、説教されたり、キスされたり、抱きよせられたりなどというイベントは決して起こらないのだなとしみじみ感じた。 それがどうした、とも思う。後者二つなど、今まで一度も経験したことはなかった。ありふれた友人関係など、こんな愉快な玩具と比べるべくもない。 別に、先輩より器量がよくて優しい人間など探せばいくらでもいる。等身大の人間から愛を得たいのならいくらでも方法はある。目の前でハンドトゥハンドの力を実演してやればいくらでも言うことを聞いてくれるだろう。事が済んでしまえばハンドトゥハンドで『始末』してしまえば社会的な損害も未然に防げるだろう。 「なんだ、私、世界でも征服できるんじゃないの?!」 世界征服! 面白い響きだった。一人の人間を征服できた今では、対して難しくないようにすら思えてくる。 一瞬浮かんだばかな考えを首を振って振り払い、眠る先輩に向けて微笑む。 (でも、そんなことはしませんよ先輩……いや、くーちゃん。私は、あなただけの怪獣なんですからね) 後輩は、先輩のことが守れればそれでよかった。辱めることと守ることは、後輩にとって同義だから。互いに依存しあえばいい。たった二人によって構築された世界は完璧な正円のように美しく、何者にも破られない強固なものなのだから。 どれだけ間違っていても、ゆがんでいても、それは一般的には愛と呼ばれるものだった。 戻る 次へ |