GM
それではシナリオ『宝島』、始めていきましょう
片喰あずみ
今は救世主とか言われてるけど、元の世界では狩人をやっていた。
片喰あずみ
吸血鬼とか、モノビーストとか。そういう化け物を倒す仕事。
片喰あずみ
……そのあたしが、今は吸血鬼とふたり旅なんてな。人生何があるかわかんねーもんだ。
片喰あずみ
あたしはモンスターを恨んでる。許したつもりはない。
片喰あずみ
だけど今は、まあ。一緒にいた方が都合がいい。
片喰あずみ
いざとなれば、あいつを後ろから貫けばあたしの寿命を一ヶ月延ばせるしな。
片喰あずみ
モンスターに多くを奪われた。モンスターを恨んでいる。ただ一つの例外なく。
片喰あずみ
それなのに今、吸血鬼と行動を共にし、助けて助けられている。
片喰あずみ
罪悪感がある。失った仲間への、大切な人への。
片喰あずみ
そして、どこかで傍らの吸血鬼に対しても。
片喰あずみ
血の繋がりはない。死んでしまった恋人の子供だ。
片喰あずみ
子供のことをいつも思っている。
他に頼るもののない彼のためにも必ず帰らなければいけない。
片喰あずみ
唯一の保護者を失った幼子がどうなっているか、その顛末が予想できても。
ロージィ
元の世界では吸血鬼をしてたよ。今は救世主~! キュウだけおんなじだね。
ロージィ
村の人達に捕まって、磔にされて、火に架けられて……。なんでこんなところにいるんだろうね。地獄かな?
ロージィ
でも吸血鬼にとっては元の世界よりも地獄のほうが生きやすいかも!
ロージィ
ベタベタすると嫌がるよ。でも吸血鬼から逃れられる人間なんていないからね!
ロージィ
そんなあずみを~、眷族に~したいな~って思ってるんだよね。ほらやっぱり吸血鬼としてはさ……憧れあるよね。眷族。
ロージィ
でも強引に眷族にしたら嫌われるだろうし……あずみがオッケーしてくれたらいいんだけど……でもノーって言われたらと思うと踏ん切りつかない、よね~。
ロージィ
吸血鬼になったら人の血じゃないと生きていけない。
ロージィ
まあ、自分たちの命を狙ってくる吸血鬼を許せないっていうのはわかるよ。だから許されなかった。
ロージィ
いや、別にみんないっぱい飲んで飲んで~ってしてくれるわけじゃないけど、救世主の責務なんてものがある。殺し合うのが当然の世界で、それが責務なんて言われてる。
ロージィ
あとなんかずっと曇ってて太陽出てないし最高だよね!!!!!
GM
あずみさんはハンターで、ロージィさんは吸血鬼ということですが
GM
ロージィさんの出身も興奮剤打ちながら追ってくるハンターがいた世界という認識で大丈夫なのかな。
ロージィ
そうですけど~18世紀のイギリスっ子だよ。
片喰あずみ
昔からハンターは興奮剤を使って戦ってたんだなあ。
GM
裁判で傷つき、遁走するお二人のシーンからやっていきます。
GM
夜の闇を駆けるには、頼りない灯りか、心の疵由来の超感覚が頼りとなるだろう。
GM
あなたたちの片方、ないしは両方は、裁判で手酷い傷を負っている。
GM
昏倒し、倒れ伏すことだけは、なんとか避けられた。
片喰あずみ
自分より重傷のロージィに前を走らせ、あずみは殿で救世主の放つ矢を杭で弾く。
ロージィ
息を切らして走る。おびただしい量の血液を滴らせ。
GM
『どうしたどうした。夜の戦いはそっちが有利なんだろぉ。エエッ!?』
片喰あずみ
元の世界より身体能力が上がっているとは言え、走りながら複数の敵の攻撃を捌くことは容易ではない。
GM
堕落の国の裁判は、“いい勝負”にはならないこともある。
GM
均衡が崩れてしまった裁判は、もはや裁判ではなく“狩り”だ。
ロージィ
「えーんあずみ~、このままじゃ殺されちゃうよ~」
片喰あずみ
辺りに目を向ける。この場を切り抜ける手段がないか、必死で頭を回転させる。
GM
本気で逃げる救世主を捕らえることは、同じ救世主であってもそう簡単ではない。
ロージィ
「死ぬ前にっ、作りたかったなー、眷族っ」
GM
とはいえ、時間の問題だ。この場にいる誰もが、そう感じていたに違いない。
片喰あずみ
「こんなとこで、死んでたまるか……っ」
GM
気がつけば、射掛けられる矢の雨はいつのまにか止んでいる。
ロージィ
体から引き抜いた矢を投げ返そうとして、事態に気づく。
GM
夜の種族であっても、どうしてか数メートル先も見渡せない闇の中。
GM
あなたたちがひとつ理解できることがあるとすれば……
ロージィ
ロージィの体は常に燃えている。その炎でさえも照らせぬ闇。
ロージィ
抱きつこうとして腹に刺さったままの矢がつかえる。
片喰あずみ
狩人としての経験上、この手の直感には素直に従った方がいい。
GM
あなたたちは足元もおぼつかない夜の闇の中を進む。
GM
それは格子状の窓枠の形に、切り取られ漏れ出た光だった。
ロージィ
「私が見えないってのは”そういうこと”だよ」
GM
ロージィは、得も言われぬ感覚を覚えるだろう。
ロージィ
「まあ、あいつらに倒されて、陵辱されたかもしれないしー……」
GM
それは、堕落の国に来る前に、神聖とされる何がしかに近づいたときのそれと同じである。
GM
この建物が、教会であることに気づけるかもしれない。
片喰あずみ
結局は開けるしかないように思えたので、深くは触れない。
GM
堅牢に見えるそれは、さほどの抵抗もなく開くだろう。
GM
暗い室内の向こうから、ランタンを手に現れるものがいる。
女性
血に濡れ、傷を負った二人の姿に、まあ……と口元を手で覆う。
女性
「ひどい怪我を! 早く手当をしなければ……」
女性
慌てた様子で、ソファかなにかに寝かせようと促す。
ロージィ
いささか親切にされることに抵抗がある、とはいえ。余裕がある状況でもない。
片喰あずみ
女への警戒と戸惑いを抱えながら、ロージィを見る。
片喰あずみ
「……とりあえず、手当させてもらおう」
片喰あずみ
この女は末裔か、救世主か。救世主なら自分たちを騙し討とうとしているのかもしれない。
片喰あずみ
そうだとしても、この怪我を抱えたままではまともに戦えない。
女性
修道女の恰好ではないが、どこか清廉としたものがある立ち居振る舞い。
片喰あずみ
「……悪いね、こんな夜中に邪魔して。手当まで」
ロージィ
教会。そのいかにも清く正しそうな振る舞いに覚えるのは嫉妬。
女性
「いいえ。当然のことを、しているまでですよ」
ロージィ
そんな、手当なんてしなくても、血をいただければ。
片喰あずみ
カルセラと名乗った女に、こちらも名を伝える。
ロージィ
同様に、「ロージィ」とこぼすように名乗り、二人のやり取りを聞いている。
カルセラ
「でもどうか、信じていただけませんか?」
カルセラ
「少なくとも今は、あなたたちに危害を加えようという気はありません……」
ロージィ
「まあ、疑っても仕方がありませんものね」
片喰あずみ
仕掛けるなら、タイミングはいくらでもあっただろう。
ロージィ
こうして生き延びて手当を受けているだけで儲けもの。それ以上は望めない。
カルセラ
カルセラはしばらく前から、一人でこの教会で暮らしているのだという。
カルセラ
それは本当のようで、この教会にこの三人以外の気配はない。
カルセラ
「……こちらへ。今晩は、休んでゆかれるとよいでしょう」
カルセラ
手当が済めば、ホールや礼拝堂を通り過ぎ、二人を客室へと案内するだろう。
ロージィ
付き従う。治療を受けたが、本調子ではない。
片喰あずみ
ちらとロージィの様子を気にかけながら、カルセラについてゆく。
GM
堅固に見える教会だが、壁や天井にはところどころヒビや穴を塞ぎ、取り繕った箇所がある。
GM
亡者あるいは救世主の攻撃、災害に耐えてきたのだろう。
片喰あずみ
手当てされて逆に身体弱ったりしねーのかな……。
カルセラ
大した家具があるわけではないが、堕落の国での寝床としては申し分ないだろう。
カルセラ
二人のために急いで用意されたらしく、やや埃っぽい。
片喰あずみ
時には何日も荒野を行くこともある。ベッドで寝かせてもらえるだけで上等だ。
ロージィ
この状況が、疵に触れないかというと、確かに触れる。
ロージィ
信仰の下に火にかけられた。ロージィは聖性を信じている。それに否定されることを疵にしている。
ロージィ
今もなお、疵は目に見える形で現れて、何も焼くことのない炎として揺れている。
片喰あずみ
ベッドに腰掛けて、端的な言葉をかける。
片喰あずみ
懐を探る。タバコを切らしていたのを思い出して、舌打ち。
GM
では、あなたたちは眠……れたかどうかはともかくとして、休むとして。
GM
窓の外は、(堕落の国基準で)明るいものとなり。
GM
昨夜はそれどころではなかったので気づけなかったかも知れませんが、
どうやらこの教会は海の近い場所に建っているようです。
GM
しばらくすると、部屋に近づいてくるものがいます。
カルセラです。
ロージィ
「そんな、あずみ、今日はずいぶん積極的……」
片喰あずみ
「どんな夢見てんだよ毎度のことながら」
カルセラ
ふたりともちゃんと休めたようで何よりです。
GM
枯れていない樹が立ち並び、果実を実らせている。
GM
まるで堕落の国ではないかのような光景だった。
片喰あずみ
とても堕落の国の有り様とは思えない光景。
カルセラ
あなたたちも、豊かな資源を齎す心の疵の力があることは知っているだろう。
カルセラ
堕落の国で栄える都では、その力が礎となっている。
カルセラ
「ええ……。ですから、私もこうして一人で過ごすことが出来ているのです」
カルセラ
そう言うカルセラの様子は、どこか浮かない。
片喰あずみ
こういうのの恩恵に与れるやつらは、他の救世主を差し出してでも生かそうとするだろうな……とか思う。
片喰あずみ
「でも、にしてはあんまり嬉しそうじゃないね」
ロージィ
救世主の責務はどうしているんだろう、と思う。
ロージィ
戦うような力じゃないなら、守ってもらったほうがいいはず。
ロージィ
話をしながら、オムレツやスパゲッティの多くをあずみの皿に盛り直す。
片喰あずみ
「ああ、あたしがありがたくいただくよ」
カルセラ
「そうでしたか……。すみません。
久々のお客様だったので、張り切りすぎてしまいましたね」
ロージィ
「いえいえ、とても美味しいです。ありがとうございます」
ロージィ
もちろん嘘だ。今も吐き気を我慢している。
カルセラ
「ここで過ごしていると、どうしても人との関わりに飢えてしまって」
カルセラ
「おふたりとも、食事が終わったら、私についてきていただけませんか?」
ロージィ
現状を判断する材料が不足している。断る理由はない。
カルセラ
「私が、ここで過ごしている理由に関わるものです」
GM
あなたたちは、カルセラに案内されるまま教会を出て、少し歩く。
GM
堕落の国の海は、淀み汚れたものであるはずだが、
GM
水平線は、霞がかっていて、ぼんやりとしか見えない。
カルセラ
「あなたたちは、この堕落の国から、出たいと思ったことはありますか?」
カルセラ
「元の世界。あるいは、どこか別の所……」
カルセラ
「私とは、違う考えのようですね。ロージィさんは」
カルセラ
「戦いに疲れた救世主を、元の世界に送り届けてくれるのだと」
ロージィ
「確かに、それじゃあ元の世界に帰りたいねえ」
カルセラ
「だから私は、ここで船が来るのを待ち続けているのです……」
ロージィ
「でもぉ~、私の最高のパートナーっていったらあずみですし? わたしたちは大丈夫かな~、って……」
片喰あずみ
水平線に目を凝らしても、船らしきものは見えはしない。
ロージィ
あずみの腰に手を回しながら、早口で話す。
片喰あずみ
いつもなら触るなとか言って手でもはたくところだけど、今はただ突っ立っている。
ロージィ
この微妙に傾いだような空気を、どうにかしたくて。
ロージィ
「それに~、その伝説って本当なんですか~?」
ロージィ
「まあ、いいところだから? 待つにはよさそうですけどぉ」
カルセラ
「もし本当であることを証明できるなら、私はここにいませんよ」
片喰あずみ
元の世界に帰る方法、と謳ったものはこれまでにもいくつか耳にした。
ロージィ
「でも、他に帰りたい救世主もここに来そうだから、責務を果たすにはちょうどいいのかも」
片喰あずみ
けれどその中には、ほんの一握りだけ真実もある、と、言われている。
カルセラ
「あなたたちに見せたいものは、もう一つあります」
カルセラ
前髪の奥からの視線は、あなたたちではなく、そのはるか後方を向いている。
GM
丘の向こうから、何か巨大なものが飛来してくる。
三人の上に影が落ちる。
ロージィ
あずみから飛び退くように離れて、それを見る。
竜
凶器を向けられても、それを気に留める様子はない。
亡者
三人が亡者と呼ぶそれは、
海辺に生える萎びて元気のない椰子の木を見つけると、
それに向けて、大きなあぎとを開く。
GM
椰子の木はみるみる活力を取り戻し、新しい果実を実らせすらする。
カルセラ
「あの亡者のことを、私は“ワンダーバッフェ”と呼んでいます」
カルセラ
「そしてこの海岸に近づくものと、出ようとするものを襲うのです」
ワンダーバッフェ
ワンダーバッフェと呼ばれた亡者は、三人を襲おうとする素振りをまったく見せない。
ワンダーバッフェ
それどころか、満足したように、三人を置いて再びどこかへと飛び去ってしまった。
ロージィ
「まるで私たちにここにいてほしいみたいですねえ」
カルセラ
「彼が何を考えているのかは、私にも」首を横に振る。
カルセラ
「あなたたちは、運が良かったのでしょう」
カルセラ
「本当なら、この教会に来たときに、襲われているはずなのです」
カルセラ
「何か別の侵入者を、見つけたのでしょうね」
ロージィ
「ちょうど追われてたんですよ。他の救世主に」
片喰あずみ
「下手すりゃやつらと一緒に仲良く襲われてたのか」
ロージィ
救世主はパンだけで生きていけるわけじゃない。
片喰あずみ
「あんな門番がいるんじゃ、そうそう運良く人が来るもんでもないだろ」
カルセラ
「確かに危険な地ですが、救世主にとって魅力的な場所でもあるらしいですからね、ここは」
ロージィ
つまりそれは、ワンダーバッフェが昏倒させた救世主のこと。
カルセラ
なにかに耐えかねた様子で再び水平線のほうを向いた。
片喰あずみ
「……なら、あたしらは本当に運がよかったみたいだな」
カルセラ
「少なくとも、ここにいる間はワンダーバッフェに襲われることはありません」
カルセラ
「その間に、英気を養い、傷を癒やして……」
カルセラ
「“必要以上”に、殺めたくはないだけですよ」
片喰あずみ
責務を終えたばかりだったのだろう。なんとも運のいいことに。
ロージィ
ロージィは問わない。それを聞いても、いいことは自分にないと直感していたから。
カルセラ
「ワンダーバッフェを倒し、ここを去るか……」
カルセラ
「……きっと、そのどちらかになるでしょう」
カルセラ
疲れた様子でそう言い残して、カルセラは教会へと戻っていく。
ロージィ
「あーあ、あいつらを倒せちゃう亡者かぁ」
片喰あずみ
言葉を返しつつも、あずみの視線は水平線へと向けられている。
ロージィ
「それまで美味しいご飯を食べれてよかったね」
片喰あずみ
堕落の国を抜け出す方法なんて、その多くはデタラメで。
片喰あずみ
カルセラがそう言っているだけのことで。
片喰あずみ
そんな事は不可能なのに、哀れなやつだと一笑に付してしまえばいい。
片喰あずみ
視線は今も、海の彼方に向けられている。
ロージィ
ロージィは問わない。それを聞いても、いいことは自分にないと直感していたから。
片喰あずみ
どこか名残惜しそうに、海に背を向ける。
片喰あずみ
「……あんまり海を見てると、あいつに襲われるかもしれんしな」
GM
そのもやの向こうの影が、ほんの少しだけ蠢いた気がした。